麺を専門に、もしくは麺を中心にしたお店の開業や運営をしたいなら、やはり「美味しい」麺を提供したいものです。「美味しい」と胸を張って提供できる麺を作るための方法はあるのでしょうか。
そもそも、麺の種類によって製麺工程は当然異なり、うどんにはうどんの、そばにはそばの、ラーメンにはラーメンならではの麺や製麺工程の特徴があります。より良い製麺のためには、麺ごとに特徴を理解し、適切な製麺方法を知ることが大切。
そのために必要なのは麺の知識です。このページでは、より良い麺作りに役に立つ麺の基礎知識をまとめています。
麺と一口に言っても、うどんやそば、ラーメンなどで使用される麺はそれぞれ異なり、その他にもパスタや素麺、フォーなど多種多様な麺があります。麺の材料についても、小麦粉を使用しているものからそば粉や米粉などを使用しているものまで様々。小麦粉を使った麺であっても太さや形状、製麺方法などによって麺の種類や料理との相性が異なります。一般的に知られている麺だけを見ても、例えば以下のような種類があります。
また上記の麺類であっても、乾燥した状態で販売されているものや半生状態で販売されているもの、機械製麺や手打ち麺など複数のタイプが存在しており、ニーズに適した麺を選択することが大切です。
一般的にラーメンの麺は原材料として小麦粉が使われますが、実際には小麦粉にも複数の種類があり素材の特性は製麺後の麺の状態に大きく影響します。また、そばの麺ではそば粉を使って麺打ちをしますが、そば粉を10割にするのか小麦粉を混ぜるのかによっても食感や風味が変化します。
ビーフンやフォーなどのライスヌードルは文字通り米粉を使った麺であり、さらに米粉だけでなくタピオカ粉も合わせて作られている麺もあります。
ラーメンに使用される麺は極細麺と呼ばれるようなとても細い麺から、通常よりもやや細い細麺、とても太い極太麺など大きく6種類に分類され、麺の太さによってスープの絡み具合や相性、噛んだ時の食感など味わいが変化します。
麺の太さは製麺工程で使用する切刀の「番手」で調整可能であり、JIS規格では幅30mmの麺帯に対して何本の麺を切り出せるかで番手を設定しています。例えば30mmの麺帯から1本の麺となる場合は1番手、1mmの麺を30本切り出す場合は30番手となり、ラーメンでは12番~28番が一般的な番手です。
含まれている水分量や乾燥状態によっても麺は分類されており、大きく分けて5種類です。麺の状態によって保存期間や調理法が異なるため、作る料理や環境に合わせて選択する必要があります。
文字通り乾燥している麺であり、麺の水分含有量が低く保たれているものを指します。そもそも麺は水分量が多いほど保存可能な期間が短くなってしまうため、長期間の保存を目的としている場合、麺を乾燥させて乾麺にする必要があります。乾麺として販売されている麺の保存期間や賞味期限は種類によっても様々ですが、状態によっては年単位で保存できるといった麺も少なくありません。代表例としては乾燥パスタやインスタントラーメンなどがあります。
乾麺と生麺のちょうど中間程度の水分量に調節されている麺です。保存できる期間の長さについても、乾麺より短く、生麺よりも長いという状態になっており、1~2ヶ月程度の賞味期限が設定されています。お土産品や通販食品など、麺の風味と保存期間のメリットを両立したい場合などに半乾燥麺が使用されます。
生麺は製麺してから乾燥工程を経ていない麺であり、生の状態が保たれている麺です。打ったばかりの麺や製麺したての麺をそのまま製麺所から納品してもらった場合や、製麺所でその日のうちに食べるための手打ち麺を購入した場合などは生麺になります。
水分含有量の多い生麺は、色々な麺の中でも特に本来の食感や香りを味わいやすい状態です。茹でる時間も乾麺や半乾燥麺より短くなる反面、賞味期限が短く、日持ちしないといったデメリットがあります。
通常の方法で製造された生麺を茹でて、アルファー化されている状態で商品化されている麺です。ゆで麺の水分含有量は70%程度とされており、そのままの状態で食べられるものから、茹でるといった最終工程を必要とするものまであります。
蒸し麺は生麺を茹でる代わりに蒸すことで製造された麺です。ゆで麺と同様に十分なアルファー化がされています。蒸し麺は直接湯につけず、蒸気によって麺をアルファー化しているため、ゆで麺よりも水分含有量が少なく55~60%程度です。
例えば博多ラーメンではバリカタやハリガネといった硬い麺を好む人も多いように、麺の硬さは食感や味わいに影響する要素であり、必然的にラーメンの種類やスープの特徴によって適切な麺の茹で時間も変わってきます。
麺の硬さは、長く茹でれば柔らかくなり、短く茹でれば硬めになるという茹で時間の影響の他にも、麺の太さも考慮して調整することが必要です。
バリカタは通常の麺の硬さと比較して、硬めよりもさらに硬い麺の状態です。特に博多ラーメンのように細麺を使ってバリカタの麺にする場合、茹で時間を15~20秒ほどの短時間に調整するといった工夫が重要になります。
文字通り硬めの状態の麺です。バリカタよりも柔らかいものの、一般的にラーメンの麺として想定されるような状態よりも硬く歯ごたえのあるものになります。茹で時間はバリカタよりも長めで20~45秒ほどが多いようです。
きちんと麺の中に火が通って完全に茹で上がっている状態を「普通」の硬さと考えます。麺の太さによって普通の硬さにするための茹で時間は変化しますが、博多ラーメンの細麺であれば45~70秒ほどの茹で時間で調整されることが多いでしょう。
普通の状態よりもさらに茹で時間を延長して、少しだけ柔らかい食感にした状態を「柔め」とか「やわ」といった表現で区別します。茹で時間は70~100秒ほどとなっており、柔らかい麺を好む人には選ばれやすい麺の状態です。
バリ柔はバリカタの反対で、柔めの麺よりもさらに柔らかく、麺のコシが減ってふにゃっとしている状態です。単に麺がのびてしまった状態とは違い、あくまでも茹で時間を長めにして調整しなければなりません。一般的に茹で時間は100~150秒ほどです。
小麦粉として販売されている小麦には一般的に4つの種類が存在しており、それぞれの特性によって製麺用途も異なることがポイントです。
主に使用されている小麦には以下の4種類があります。
なお、4種類の中でもデュラム小麦は特にパスタを作るために使用される小麦の種類。弾力性が強く、柔軟なグルテンを豊富に含んでいることが特徴です。また色がやや黄色みを帯びており、麺の色が自然と黄色くなります。
一方で日本料理やお菓子作り、ラーメンなどに使用される小麦は硬質小麦・中間質小麦・軟質小麦となっており、麺の種類や調理法によって使い分けられます。
分類方法としてはタンパク質の含有量が多い順に硬質小麦・中間質小麦・軟質小麦となっており、タンパク質が多いほど弾力のある食感になります。またタンパク質が少ないほど、柔らかくなる性質を持っています。
パスタを除いて、うどんやラーメンの麺を作るために小麦粉を使用する場合、硬質小麦から作られる強力粉や準強力粉、中間質小麦や軟質小麦から作られる中力粉などを使うのが基本です。ただし製麺時に食感や風味を調節するため強力粉と準強力粉をミックスさせたり、強力粉と中力粉をミックスさせたりといった調合をすることもあります。
なお家庭で簡単に手打ちうどんを楽しみたい場合、強力粉と薄力粉を混ぜて中力粉の代わりにするといったこともあるでしょう。
小麦の種類や小麦粉の性質はデータや数値によって分類できるものの、やはり実際にどのような味わいになるのか製麺された麺を自分で食べて確かめることが必要です。特に麺の状態だけで食べた場合と、スープや具材と一緒に食べた場合で印象が変わることもあり、自家製麺を考えている人は複数のサンプルを比較しながら自店舗の最適解を探していくことが大切です。
ラーメンの麺は製麺されたその日に消費されるものから、インスタントラーメンのように長期間の保存を前提として製造される麺などもあり、それぞれの条件に応じて添加物が使用されることもあります。
なお、国内でJAS規格に適合したラーメンを製造する場合、使用できる食品添加物も食品衛生法によって安全性が確認されているものに限られており、JASマークのついた麺やラーメンはJAS規格に則った添加物のみが使用されていると判断可能です。
生麺は即日や比較的短期間で消費されることを前提としており、生麺に使われる添加物は麺のコシを強めたり風味を強めたりと、麺の製造や味わいへ影響するものになります。
例えばラーメンの麺のコシを生む添加物として「かんすい」があり、かんすい入りの麺は中華麺の風味が強まります。その他にも麺のコシを出す増粘安定剤や、油分を均一化して品質を安定させる乳化製剤、黄色い麺の色を出すための着色料など様々な添加物が存在します。
乾麺やインスタント麺の場合、生麺に使用される添加物の他にも、麺に含まれる油脂が空気によって酸化することを抑制するため、酸化防止剤としてビタミンEを使用することが一般的です。なおビタミンEは保存料とは区別されていることもポイントです。
さらに日本即席食品工業協会では普段の食生活で不足しがちな栄養素を補強するため、インスタントラーメンにカルシウムなどの栄養強化剤を添加することも推奨しています。
うどんは、小麦粉と水を練り、麺に加工したもののこと。そうめんやひやむぎ、きしめんなどもうどんの一種です。
職人の打つうどんが美味しい理由となんでしょうか。
讃岐うどんで例えると、足踏みやカットの工程が「美味しさ」を左右すると言われます。その理由は、足踏みの工程でグルテンが網目状の組織を作り弾力性が生まれるから。
そして、カットによって麺の断面がくびれた状態のひし形になっていると、つゆがよく絡み、エッジが立った麺に仕上がります。
また、加水率も重要。うどんは、そばやパスタと比べると加水率が高いのが特徴です。当然、水が多いと麺が柔らかくなります。
さらに、製麺時に生地を寝かせる、「熟成」の工程も重要です。うどん生地を熟成することで、水分を生地全体に行きわたらせる効果があります。
そばは、そばの実を挽いたそば粉を加工した麺のことを指します。全国製麺協同組合連合会では、そば粉が30%以上で、小麦粉は70%以下の配合率の麺を「日本そば」と定義しています。
そばは、基本的に、そば粉と水と打ち粉だけで作ります。これが「十割そば」です。そば粉には、小麦粉と違ってグルテンがないため、製麺するのが難しいと言われています。そばの製麺で特に重要なのは“水回し”と呼ばれる工程です。この“水回し”の工程で、そば粉と水を均一に混ぜることによって美味しい十割そばを作れます。
そばの製麺で難しいのは、後から水や粉を加えて調整できない点。
そこで、小麦粉を加える方法があります。小麦粉はグルテンを生成するため、製麺した時に切れず、調節しやすくなるうえに味を良くしやすくなるのが利点です。
また、そば粉には、一番粉、二番粉、三番粉、挽きぐるみと4種類あります。一番粉はでんぷんが主成分で、“さらしな粉”と呼ばれます。「更科そば」は一番粉を使用しているそばということ。
このように、そば粉によってもそば種類や味が変わります。
ラーメンに使用される中華麺は、小麦粉と水に“かん水”を加えて作られています。
かん水とはアルカリ塩水溶液のこと。小麦粉に混ぜると、もちっとしたコシが生まれます。中華麺が黄色いのも、かん水によるものです。
中華麺の生地は、うどんの材料にかん水を足しただけのように思えるかもしれませんが、うどんとは大きく異なる点があります。
それは、「複合」です。多くの場合、手作りであっても機械であっても、中華麺の生地を2つにわけ、圧力をかけて1つにまとめる「複合」の工程は必須。
その後、機械を使う場合は、麺を帯状にして棒などに巻き付けたもの(麺帯)を熟成させて切り出すのが一般的な製麺の仕方です。
また、中華麺の太さは、うどんやそばに比べると圧倒的に種類が多いことが特徴。極細麺・細麺・中細麺・中太麺・太麺・極太麺など、6種類以上あります。
ラーメンは、地域やお店のスープによって、小麦粉とかん水の割合や、麺の太さが異なることが多いため、自家製麺を求める人が多くいます。仕入れ麺でも問題はありませんが、より美味しさやスープとのマッチ度の高さを求めるのであれば、自家製麺を検討してみてください。
うどん、そば、ラーメンの麺の基礎知識を解説してきました。どんな麺にしろ、製麺する際にはある程度の知識が必要です。
麺の知識を習得するためには、職人に弟子入りしたり、麺の学校に通ったりと、さまざまな方法があります。しっかり学んで、一から自家製麺を手作りするのも良いでしょう。
しかし、自家製麺を安定的かつ大量に精算するためには、製麺所に依頼をするか、小型製麺機を導入することで、いくつかの問題が解決します。
特に、小型製麺機の導入は、初期費用がかかるもののランニングコストを抑えることが可能。初期費用に余裕がある場合には、小型製麺機を導入してみてはいかがでしょうか。
小型製麺機には、さまざまな種類があります。場合によっては、1つの機体でさまざまな麺を作ることもできますが、製麺時の特徴に合わせて、専門的な機能を備えた小型製麺機の方が、より美味しさを追求できるでしょう。
導入後に後悔しない小型製麺機を選ぶためには、気をつけるべきポイントがいくつかあります。
このサイトでは、製麺したい麺ごとに、適切な小型製麺機を選ぶための情報を掲載しています。おすすめの小型製麺機3選や麺についての知識も得られるので、ぜひ、小型製麺機導入の際の参考にしてください。
おすすめ
麺の種類ごとに分かれた専用の小型製麺機なら麺の特徴に合わせて製麺できるので、よりおいしさを追求できます。
「うどんもそばも製麺したい!」「業態変更を視野に入れている」場合を除き、作りたい麺に合わせて選ぶのがおすすめです。